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暗闇の中でチラチラと一筋の光が差し込む。


(…………俺は、)


肌で風を感じれば、嗅ぎ慣れない消毒液の匂いが辺りに漂い始める。


「うっ、…………」


目を開けると、意識がクリアになっていく。


「……ここは……?」


カーテンだけで仕切られた、寛容な個室。


下半身には長時間に渡って正座したあとのような痺れと、鉛が置かれているような重圧感があった。


肘をついて起き上がれば、ベッドの掛け布団に突っ伏して眠っているノゾミの寝顔が。


「俺、倒れたのか……」


ふっと、繭のように降りかかってくる他人の眼に横を向けば、会った記憶のない老婆が立っていた。


「うおっ?!!」


ビクッと肩を揺らすが、老婆は微動だにしない。



「おやおや、目が覚めたみたいだねぇ。良かったよかった」


「だ、誰っすか?」

…………俺は、見えてはいけないものが見えているのか?


いや、しっかり足はあるみたいだが……。