「ごほっ、……うっ、」



苦鳴と共に、目の前の影がぐらりと傾く。


口元を抑えた指の隙間から、鮮血が滴り落ちた。



吐血したかと思えば、静かに重力に負けていく。


「マサト……?」



糸が切れた操り人形のように、膝の力が抜けて崩れ落ちていく。



「マサト!!」


……最後のパズルのピースを、隠されてしまったみたいに。



伸ばした手は、あなたに届かない。



カレンの時のように、もう少しのところで大切なものを私はまた、取りこぼしてしまうの?



「ねぇ、マサト……ウソでしょ? 目、開けてよ……っ」



アスファルトに叩きつけられた身体は、瞼を閉じたまで呼びかけに反応しない。



口から流れ出る恐ろしいほどに鮮やかな血が、アスファルトの隙間に染み込んでいく。


「ど、どうしよう、き、救急車……っ!!」


真っ白でパニックになる指先を震わせて、私は必死に119をコールした。


「……やだ、嫌だ、目を開けてよ、ねぇ……っ、」




苦しいほどに、悲しいほどに。


人通りの少ない住宅街で、スクリーンの斑紋のように頼りなく点滅する星々だけが、私たちに寄り添っていた。