──……時は遡り、1年前。──



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高校2年生になり、桜の花が散りゆく季節に高熱を出した俺は、念のために病院で血液検査を受けていた。


体に異変があるってことで、検査入院で結果待ちをしていたんだが……。


看護師に呼びだされ、おふくろと診察室に入れば、神妙な面持ちの医者が俺たちを迎えた。


青白く光るシャーカステンに貼り付けられた臓器の写真と、レントゲン写真。


耳に入ってきたのは、テレビや新聞でも聞き慣れない珍しい名前の病気で。


「はっ? 余命? 余命って、そりゃ……」

唐突に”死”というものを突きつけられ、俺は半ば放心状態だった。


(死ぬのか、俺が?)



「鳳凰さん。この病気は難病に指定されています。日本ではまず、手術を施行している病院すらない。手術を受けるには、アメリカの病院に入院する必要があります」



学校行ってバイトして、普通に息してた俺が……死ぬのか?




医者からの説明が、ほとんど頭に入ってこない。



ただ、病気が進行するにつれて石のように全身が動かなくなっていくという残酷な説明だけが、俺に絶望を摩り込ませていった。