先ほどヨウに言われた言葉たちが、頭の中をぐるぐると回り始める。



──『トオルもさ、マサトの余命は知っとるんやろ? なら、ええ加減にマサトの為にも天音ちゃんを手放したってくれ』──



勝負の行方を締めくくるピストル音が2発、青空に放たれた。


ゆるゆると顔を上げると、一番乗りでゴールテープを切った彼らは、互いに励まし合い、笑っていた。


天音さんは、俺に見せないような充足に満ちた顔でマサトと拳を付き合わせていて。


──『天音さんがマサトに惹かれてるのを知っときながら、告白したんやろ? ほんならっ、』──



…………俺の居場所は、天音さんの居場所は……。


──『天音ちゃんがマサトの側におったなら、もうアイツはあかんのやって!』──



分かってる、分かってるんだよ。



それでも俺は、天音さんが好きだ。


一緒にいたい、彼女を守りたい。


そう願うのは、ワガママなのだろうか。


……許されないこと、なのだろうか。