片手を頬に添えながら、栗木さんは侮辱の目を向けてくる。


「さっさと青龍院くんを解放してあげなさいよ。じゃないと、彼が哀れすぎるわぁ。ねぇ、さっき見てたんでしょ? 私とキスしてるところ。青龍院くんね、何の抵抗もしなかったわよ? よっぽど、あなたとの関係に疲れきってるのね〜」


やりきれない気持ちが、胸の中でぐちゃぐちゃに混ざり合う。


「私が青龍院くんに好意を寄せて天音さんを傷付けていることと、天音さんが鳳凰くんと仲良くして青龍院くんを傷付けてること。どっちも同じことなの。相手の気持ちを踏みにじってるってこと。ここまで説明すれば、意味が分かった? うふふっ」


灰色になって、次々と感情が死んでいく。


「さっさと青龍院くんと別れてくれる? 目障りなの、あなた」



知らず知らずのうちに、私はトオルくんの心を傷付けてしまっていた。


私がマサトを助けたいと思うほど、トオルくんは傷付いてしまう。


トオルくんは、優しいからなにも言ってこずに耐え続けてくれた。



そんな彼の優しさに、私は……甘えていたのだ。


栗木さんの、言う通りだ……。