放課後。


結局、マサトは学校に姿を見せないまま体育祭についてのホームルームが始まった。


「じゃぁ、各競技の出場選手を決めていきましょうか」


深緑の黒板に、カッカッと白いチョークで種目が書かれていく。


「……んー、高3が出場する種目は、ざっとこんなもんね」


応援合戦、100m走、綱引き、棒倒し、二人三脚……。



体育が苦手な私は並んだ種目名に、ウゲェっと苦々しい表情を浮かべる。



「とりあえず、ウチのクラスの最終兵器、バスケ部エースの玄武 輝くんには100m走のアンカーをお願いしようかしらっ」


宇佐美先生からのウィンクを受け取った玄武くんは、「そうなると思ってました」と苦笑いしていた。


みんなが部活を引退する中、玄武くんが所属するバスケ部は予選を勝ち続け、まだ現役でいるらしい。


ただでさえ現役の運動部が少ない高校3年生でバリバリ現役の玄武くんはまさに、クラスの光なのである。


いや、救世主と言っても過言ではない。



「もう全部、玄武くんが出場すればいいと思いまぁーす」



金髪ヤンキー笹原が挙手してそう茶化せば、先生は満面の笑みのまま「あら、そう?」っと再びチョークを手に取る。


そして何も言わないまま、すべての種目に笹原の名前を書いていった。



「はい、注目〜。笹原が全部の種目に出たいそうよっ。頑張るわねぇ、笹原。この案に賛成の人、手を上げて〜」

「ちょっ! 宇佐美ちゃん、冗談だって! 悪かったよ」



悪ノリする教室内の雑踏に、笹原の悲鳴が混じる。