宇佐美先生が出て行った教室内では、いつもの文句タラタラのヘイト祭りが開催される。


金髪ヤンキーの笹原とその取り巻きたちが、椅子に踏ん反り返って舌打ちをする。



「っつーかさぁ、宇佐美ちゃんは受験だ受験だって言ってるけど、俺らにはもっと大事なイベントがもうすぐあるよなぁ?」
「ホントそれだぜ。宇佐美ちゃん、忘れてるのかな。体育祭のこと」
「忘れてるならボンクラ認定だな、宇佐美ちゃんは」



確かに、彼らの言うことも一理ある。



9月末に控えた体育祭について、私たちのクラスはまだ何も話し合っていない。


笹原たちが続けて不満を口にしようとした瞬間、教室の扉がガラガラッと勢いよく開かれた。


現れたのは、先ほど教室を後にした宇佐美先生で。


「あ、体育祭については放課後のホームルームで話し合うわよっ。だから、先生のことは”ボンクラ”呼ばわりしないでねっ? よろしく、笹原」


名指しで指摘された笹原たちは、サーっと青ざめていく。


……宇佐美先生の地獄耳、恐るべし。



頰をついて見守る教室内には、いつもこの教室を仕切るマサトの姿はなかった。