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「あー、だりぃ」


ガソリンスタンドのバイトに明け暮れながら、つかの間の暇を見つけて自販機の横にしゃがみ込む。


夏休みに入ってからというもの、身体の調子が悪い気がする。


医者から処方された気休めの薬を口に放り込み、ペットボトルの蓋を開けて水を流し込む。


「なんでこんな日に限って、欠員が出るんだよ。しっかりしてくれよ正社員さんよぉ」


本当ならば家でダラダラしようかと思っていたが、夕方に店長から「社員が体調不良で休みになったから、出て来てください。お願い致します」と怯えた声で電話がかかってきた。


電話を受け取った時には、(まぁ体調不良ならしゃーないか)っと思ったが、すぐに仮病だなと気付いた。


今日は、遠方からの客も来るような地元でもデカイ花火大会の日だ。



大方、今日休んだ社員は、花火大会に行きたいけど無理に出勤にされてギリギリで病欠にしたってところだろう。


ってことで、仮病確定。



「はー、ツイてねぇなぁ」


「おーい、鳳凰〜。どこだー? 客が窓拭いて欲しいってさ。頼めるか?」


「うぃーす、すぐに行きま〜す」


折り曲げていた両膝に力を入れて立ち上がるが、力が上手く入らずに片膝が地面に着く。


「チッ、」

そんな自分の身体に、苛立ちを感じる日が増えてきた。



(……なんで、上手く動かないんだよ。動けよ、まだ生きてんだろうが俺の身体、言うこと聞けや)



軽く舌打ちを鳴らし、自販機の側面を支えにして手をついて立ち上がる。