『そうだ、面白いことを思いついた』


城之内はカレンの顎を持ち上げ、皮肉で歪んだ笑いを頬に浮かべる。


『今からここに来る天音を、罵倒して突き放せ。天音が味方についてから、お前、調子乗り過ぎだしな』


『えっ、……』



悪意ある矛先は、正義を振りかざす者へと向けられる。


『俺の言う通りにしなければ、今度は天音をイジメてやるよ。倍、イジメぬいてやる! ハハッ! さぁ、どうする?』


カレンは、ノゾミが自分と同じ痛みを背負うことを恐れた。


城之内にイジメられ続けてきたからこそ、その痛みの恐ろしさに屈してしまった。



ー『そんなゴミみたいな正義感振りかざして、楽しい? ねぇ、周りのこと考えずに自己中心的に人助けして、楽しいの?』


間違った選択を、してしまったのだ。


ー『あんたが友だちになる前のほうが、よっぽどマシな毎日だった! もう私に関わらないで、私の友だち面しないで!!』ー



その間違いに気付いたのは、罵倒したあとのノゾミの悲哀に満ちた表情を、確認してからだった。



言ってしまったあとに、違う、そんなことは思っていないよと訂正しても、傷付けてしまった事実は消えない。


城之内に屈してしまわずに、ふたりで立ち向かっていれば……状況は、最悪の事態にならずに済んだかも知れなかったが。