イジメられることを恐れずに、手を差し伸べてくれたポチは、彼女にとって唯一無二の存在だ。


それを自ら手放すのは、また孤立することを意味する。


俺には、この女子生徒がわざわざポチを突き放す理由が分からなかった。


もし、それが誰かの命令の元に実行された、行動ならば……?


「カレン、そうだよなぁ?! お前、ずっとあいつのことウザいって言ってもんなぁ?」


俺の仮定を裏付けるように、急に城之内が女子生徒を抑圧しだす。



女子生徒の瞳には、僅かばかりの涙が溢れ始めていた。


ヨウが「ちょい、黙ってくれへん?」と、城之内の口を塞ぐ。


女子生徒が真実を吐露するには、あとほんの少しの勇気が必要だった。


少し、背中を押してやるだけ。


「なぁ? アンタさ、大切な友達を裏切ってずっと嘘吐き続けてきたんなら、いい加減、変わらなきゃダセェよ。変わるなら、今だと思うが? 違うか?」


観念したかのように深いため息を吐いた西園 歌恋は、第一声に「ごめんなさい」、と呟いた。



「あなたの言う通り、私、ずっと嘘をついてきた……っ。中庭で助けに来てくれたノゾミに罵声を浴びせたあの日、……実は、城之内くんに指示されていたの……っ」


「なにを指示されてたんだ?」


「『今から助けに来る天音を罵倒しろ、しなければ、俺たちのイジメのターゲットは天音に変えるからな。お前の倍、イジメてやるから覚悟しろ』、って……」