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「お、俺がアンタに、なにしたって言うんだよぉ?!」


情けない声を出して河川敷を這いつくばる男子生徒を、俺は冷えた目で見下ろしていた。


「城之内っつったか? お前さ、自分が今までなにしたか胸に手を当てて、よ〜く考えてみろ。なっ?」



顔見知りの女子生徒に頼んで甘い言葉で電話をかけさせれば、まんまと引っかかって指定場所に現れた哀れな男、柴蔵高校の城之内。


ポチを虐めて、苦しめていた元凶。


そう思えば思うほど、胸の中になにか熱いものが込み上げてくる。


城之内に連れられて、西園 歌恋とかいう女子生徒も少し離れた場所に佇んでいた。


まぁ、その表情はこっちにビビって、完全に青ざめているが。


「あ、アンタみたいな人にちょっかいをかけた覚えはな、」


言い終える前に、手の平で口を鷲掴みにする。


「心当たりがありすぎてさぁ、心臓破裂しそうなんだろ? 違うか?」


「ひ、ひいっ!」


喉をヒクつかせて息を吸うクソ野郎を軽く小突けば、尻餅をついたまま半泣きで後退していく。


(尻で移動するなんざ、器用なヤツだな)、なんて見守っていると、城之内は俺の背後を指差して引き攣った笑みを浮かべていた。



「は、ははっ。俺に電話をかけてきた女をみんなに回してやろうと、仲間をここに呼んでおいたんだ。残念だったな、お前」

「なに?」

数秒後、振り返るよりも先に鈍い痛みが頭に走る。


「っ、」


後ろに立っている奴らに何かで殴られたと悟るには、そう時間はかからなかった。