「たっだいま〜! あらっ、見たことない靴がある〜」



突然、玄関の方から騒がしい声が聞こえてきた。


数秒後、リビングの扉がバガンッ!と激しく開かれる。


入ってきたのは、Tシャツにジーンズ姿の30代くらいの、綺麗な女の人で。


「おっ! マサトの新しい彼女?! あんたが女の子を部屋に連れ込んで盛ってないなんて、珍しいわね〜」


「へ、部屋に連れ込んで? 盛っていない? ……それって、どういう……」


パワフル全開な謎の女性にあんぐりと口を開けていると、彼女の正体を知っているマサトが呆れ顔で近付いてくる。


「おい、おふくろ。そいつに服、貸してやってくれ」


マサトと女性の顔を、交互に見比べる。


「お、おふくろってことは…… もしかして、マサトの、お母さん?!」


女性はひらひらと手のひらを揺らしながら、にっこりと微笑む。


「はぁ〜い。そこの筋肉ダルマの母親、鳳凰 加奈枝(ほうおう かなえ)でーすっ。カナエさんでも、カナちゃん呼びでもどっちでもいいわよ〜」


姉です、と言われても信じてしまえるくらいに若々しいマサトのお母さんは、おもむろにタンスを漁り始める。


一枚、また一枚とフローリングに服が落とされていく。



「えーっと、…………あ! あったあった。はい、マサトの彼女ちゃん。コレならサイズ的にも着れると思うから、ついでにお風呂入ってきなさ〜い」


手渡されたのは下着やタオル、パジャマだった。


私の身なりを見て、カナエさんは全てを察してくれたようだ。


「話は、お風呂上がったあとに聞いてあげるから。先に温もってきなさい、ねっ?」