フライパンでうどんと野菜を炒めるマサトの背中に、私は本人の着ていた制服を着ていることも忘れて、凝視する。


(……フライパン持ってる腕の筋肉、凄い……。なんだか、……)


悔しいけど、いつもよりもカッコ良く見える。



テキパキと料理をこなす同級生に目を奪われていると、平べったい皿に乗ったそれが運ばれてきた。


「よし、できたぞ。冷めないうちに食ってくれ」

「わぁ、美味しそ〜」


運ばれてきた焼うどんは、レシピ本の写真に載っていそうなくらいに完璧な見た目をしていた。


「じゃぁ、遠慮なくいただきまーすっ!」


醤油の香ばしい香りと揺れるかつおぶしに誘われ、お皿の上に広がるうどんを無我夢中で啜る。


野菜には食感が残るようにほどよく火が通っていて、噛めば噛むほどキャベツや人参の甘みを感じる。


「味はどうだ?」

「なにこれ、美味しい! 超美味しいよ!」

さっきまで襲われていたことも忘れさせてくれるような温かな味に、自然と笑顔がこぼれ落ちた。


例えようのないこの想いを、伝えるならば……



「素敵な晩ごはんを、”ありがとう”」


釣られてマサトも笑う。


「そんなにいい顔で食ってもらえるなら、作った甲斐があったよ」



彼はいつも、知らず知らずのうちに私を救ってくれる。


いけない感情だと知りつつも、だからこそ、こうして側にいれることが……たまらなく、心地良くて。