***


「お、お邪魔しまーす……」


初めての鳳凰 正人家に緊張しつつ、足を踏み入れる。


大魔王様は巨大なお城に住んでいるのでなく、ごくごく普通のアパートに住んでいた。


まぁ、当たり前だけれど。


緊張し過ぎてくだらないことを考えてしまう頭を振りかぶり、冷静さを取り戻す。


大きな背中について行くと、リビングに案内された。



「ちょっと待ってろ」


彼はそう言って、片隅にある仏壇らしきものに手を合わせ始めた。


白い布を敷いた小さなテーブルに、男の人が写っている写真立てと、果物が備えられている。