彼の言葉で、暗闇に包まれていた世界が変わった気がした。


ドキンと心臓が反応し、一気に頭へと血が昇る。


「す、好きとか言われても、困るんですけど」


口を突き出しながらぶっきらぼうに答えれば、「なら、ひとりで困っとけ」と冷たくあしらわれてしまった。


「……でも、助けてくれて、ありがとう」


「言ったろ? 俺が勝手にすることだって。お前に礼を言われる筋合いはねーよ」



そうだ、こんな俺様大魔王とは、これくらいの距離がちょうどいい。



互いに認め合って、笑い合う関係になんて……ならない方が、きっといい。


「うん、そうだね……」


力なく笑みを浮かべれば、恐怖から開放された膝が突然崩れてしまう。


「ノゾミ?!」


「あ、あはは。安心したら、腰、抜けちゃった……」


駆け寄って来たマサトの腕をやんわりと拒否すれば、ピロリンっとメッセージの受信音が路地裏に響く。


鳴ったのは、私のスマホで。


「あ、おばあちゃんからだ…………。『今日、ライブ会場の近くで泊まることになりました。戸締まりに気をつけて寝てください』って、えぇー……。まじすか……」


(さっきの男の人たちに家の場所知られてるっぽいし、報復されにでも来られたら、ちょっと怖いな……)

地べたに座ってひとりで夜を過ごすことに不安を抱きながらため息を吐くと、横から腕を拾い上げられる。


「わっ! ちょ、ちょっと、なに?」


無理やり立たされ、キョトンとしつつマサトを見上げると……