「ちょ、ちょっと!」


私が抗議するよりもマサトから繰り出される拳は、数段早かった。


体重の乗った拳は相手の顔面をひしゃげさせて、数メートル後ろへ吹っ飛ばしていく。


「うがっ!」


意思的にと言うよりは生理的な声を上げ、男たちは数秒の間に打ちのめされ、倒れたまま動かなくなってしまった。


「はっ、準備運動にもなんねーよ」


どんな困難でさえも、彼はその身ひとつで道をこじ開けてくれる。


どんな相手でさえも、全力で助けようとしてくれる。


日の当たる場所へと、導いてくれる。


西園 歌恋を救い出したいと私が憧れた理想を具現化したものこそ、彼なのではないかと錯覚してしまうほどに。