「……はあ。あんまり入ってたら、のぼせちゃうよね。上がろっと」



未練を断ち切りたくて、いつも自分に言い聞かせるように独り言を繰り返して、風呂場をあとにする。




そんな私に神様はこの時すでに、天罰を下していた。



「んっ? 新着メッセージ? ……誰からだろう」



現実から目を背けるな、と。



「……えっ、」



悪魔からのメッセージを、スマホに届けていた。



「城、之内…………?」



それは、前の高校で私に牙を剥いていた男子生徒からの、メッセージだった。


「なんで、私の連絡先を知って、……っ」


明るく光る液晶画面には、不穏な文字が並ぶ。


《今から、○○駅の前に来い。お前が婆さんと一緒に住んでるのは知ってるさ。指定した時間までに来ないと、今後、婆さんがどうなっても知らないぞ? ひとりで出歩くことを控えた方がいいかもなぁ?》



脅迫ともとれるメッセージに、スマホを持つ手が震えた。


濡れた髪からは、雫がポタポタと床に落ちていく。



汚い呼び出し方に文句のひとつでも言ってやりたい感情が彷徨って、唇を強く噛み締める。



「行ってやるわよ、行けばいいんでしょ……っ」



傷付くのは、自分ひとりで良い。


そう思いながら急いで髪を乾かし、私は家を飛び出す。



外の世界は既に薄暗く、街灯が存在感を放ち始めていた。