ーー……場所は変わり、体育館入り口では。


「はーっ! 『死にたがりのブルース』面白かったなぁ」



鑑賞を終えた城之内が仲間を引き連れて、ぞろぞろと体育館の入り口から出て来る。


「いやぁマジさぁ、あんなキスシーンとか、相当な度胸が無かったら女子にできねーべ?」
「あの主役やってたヤツ、やたらキャーキャー言われてたよなぁ」
「っつーか、さっきのクラスは顔面偏差値の格差がヤバかった」

興奮冷めやらぬといった様子で語る仲間たちを、城之内は鼻で笑う。


「背景移動させてた眼鏡かけたオタクっぽいやつとか、イジメ甲斐ありそうだったなぁ」


肩を引き寄せられて歩く西園 香恋は、愛想笑いを浮かべた。


「あはは、智くんはそればっかりだね」



後ろから彼らを追い越す桜島高校の生徒たちも、口々に先ほどの演劇の感想を言い合っていた。


その中のひとつ、女子生徒同士の会話に城之内が聞き耳を立てる。


「マサトくんの恋人役の人、ずっと顔見えなかったけど、誰がやってたんだろー?」
「背丈的に、天音さんかなぁ? ほら、あの4月に越してきた転校生の」


母校から姿を消した聞き覚えのある名前を耳にした城之内は、目を見開きながら女子生徒を凝視する。

「天音……希だって?」