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ーー……教室内でのトラブルから数時間後。



蒸し風呂のような暑さの中、体育館では3年Z組による【死にたがりのブルース】が開幕した。



(……結局、教室に戻ってもマサトは機嫌悪いし、時間も無くてリハーサルにあまり参加出来なかったなぁ……)



肩を落とす暇もなく、数百人の観客を前にして役を演じるマサトやハルカくんを舞台袖から見つめる。



主人公の恋人役である私の出番は、劇の中盤。


それまでは特にすることも無いため、こうしてまだ人の演技を眺める余裕もある。


表舞台では、ロリっ子閻魔大王様に扮したハルカくんが、自殺した主人公を地獄に送るかどうかを吟味しているシーンだ。


《君が自殺した今日を、もう1度……いや、あと数回、繰り返してみようよ。きっと面白いことになりそうだ。うん、そうしよう》

小悪魔な角のついたカチューシャを被るハルカくんが喋るたびに、「可愛い〜っ」っと黄色い歓声が上がって。


《おい、勝手に決めんじゃねぇよ! 俺は、》



マサトが喋るたびに「尊い、しんどい。無理カッコいい」と女子生徒たちの悲鳴が上がっている。


女子生徒たちがノックアウトされている理由のひとつが、いつもの無造作ヘアーとは違って綺麗に整えられた、髪型と。


社会人の主人公に扮している彼のスーツ姿による、ギャップ萌えというものだろう。