ここ最近の練習で見えない壁が崩れてきたかなと感じていたのは自分だけだったんだと知って、言いようのない恥ずかしさが込み上げてきた。


「あと、最後の舞台挨拶も出んなよ? ”大根役者”は大人しく引っ込んでろ」


連動して、つま先から顔まで熱くなってくる。



どうして怒っているかは分からないが、どこか不機嫌なマサトから察するに、彼は演技が下手くそな私とは極力同じ舞台には立ちたくないのだろう。


言い返せないくらい痛いところを突かれて、ぐうの音も出なくて。



「あ、ちょっ、ノゾミちゃん?! どこに行くのっ?」



引き止めようとするハルカくんの制止の声を振り切って、私は教室を飛び出した。


「……ううっ、悔しい……っ」


その場から逃げ出したいというよりは、泣いている顔をみんなに見られたくなかったんだ。