ふたりからの眼差しを受けていたマサトが、ガンッと乱雑に机を蹴り上げて立ち上がる。



「俺の周りは敵だらけってか? 上等じゃねーか、そっちの方が燃えるぜ」


鞄を手にそのまま教室を後にしようとすれば、正義感の強いトオルくんが引き止めた。


「待てよ、天音さんに謝れ」


紅に金を混ぜた強烈な光彩を浴びてゆっくりと振り返る彼は、息を飲むほどに雄々しくて。



「は? 謝るどころか、俺の性欲を煽るような顔してやがるポチのが悪いと思うぜ?」


「んなっ! ムキーーッ! むかつく! 何よその言い方! 人を淫乱みたいに言ってくれちゃってさぁ!」


「言葉の通りだけどな? じゃぁな〜、また明日」


ピシャンッと力任せに閉められた教室の扉が、外部からの雑音を遮断する。