自分が思っていたよりも、限界ってのは近かったみてぇだな。



「……もう耐えれねぇ。好きだわ、お前のこと……自分のモノにしてぇ……」


突き放して、抱き寄せて。


手に入りそうで入らないものに、喚いて駄々をこねて。


ガキみてぇだな、俺は。


どれだけカッコつけても、本当に欲しいのはお前という存在だけだった。



きょとんとした目で見上げてくる天音 希を抱き締めて、熱の籠もった声で、囁く。



「……いくら払ったら、俺と付き合ってくれんの?」



しかし、次に聞こえてきたのは酷く傷付いている、ポチ公の声で。



「はぁ?! ば、馬っ鹿じゃないの!? いや、貴方のことを少しでも見直したり、心配した私の方が馬鹿だった!」


肩を押しのけられ、項垂れながら苦笑する。


……そりゃそうだ、金と自分の価値を並べられたら、誰だってキレるわな。


自分の命に見合う金が用意できずに足掻いてる、俺と違って。





ーー……しかし、この時のふたりは、お互いに解釈を間違えていることに気付いていなかった。


天音 希が「付き合う」を「突き合う」と感違いにしたことによりすれ違っていることに、気付けたならば。


また違った未来が用意されたに、違いはないが……。