今のクラスに進級希望を出したのは、宇佐美先生の勧めだった。


『来年、野生児だらけのクラスを持つんだけど、青龍院も来る? きっと、いろんな意味で成長できるわよ。人としても、将来……教師を目指す者としても』


まさに宇佐美先生の言った通りに、俺はマサトたちとつるむことで成長しているって実感する。


他のクラスにいたって、みんな俺の成績を見るだけで、中身を見ようとしてくれない。


けど、今のクラスの奴らは違う。



こちらがぶつかった分だけ、奴らもぶつかってくれる。


絆や友情を育んでるって感じる。


それに、今は……天音さんに対しても。


「でも、これはちょっとヤバいな……」


先ほどまでの時間を思い出すと、妙に鼓動が早くなる。


『トオルくんが元気になれたなら、良かった』


今日1日で垣間見得た、損得感情なしに他人のために尽くせる彼女を……素敵な人だと思ってしまった。


隣に本人がいるかのように、呼吸のリズムが乱れてしまう。


その身体に触れてみたいという欲望さえこみ上げてくる。


まるで恋に飢えた獣のように。


窮屈に感じるYシャツのネクタイを緩めながら、雨空に大きく溜め息を吐いた。


「……ヤバい、俺……天音さんのことが、好きかもしれない」


ぐしゃりと髪をかきあげ、嫌悪感にも似た感情を雨に紛らせる。


「単純すぎるだろ、俺…………」