「で、天音さん? 貴方は将来、何になりたいの?」


軋むキャスター付きの丸椅子でモデル並みに長い足を組む宇佐美先生を前にして、小さく縮こまる。


周りでは、慌ただしく書類を整理したり、部活の顧問としてジャージに着替えた先生たちが慌ただしく動いている。



「……分かりません」

口をへの字にして先の見えない暗い未来を頭の片隅に置いてそう答えると、先生はパンッと両手を合わせた。


「じゃぁ、質問を変えましょう。天音さんは、何をしてる時が1番楽しい?」


1日を振り返り、1週間を振り返り、過去を振り返ってみる。


何をしている時が、1番楽しいだろうか?


友だちと遊んでいる時?


発売日を待ち望んでいた漫画をやっとの思いで、読めた時?


おばあちゃんのお手伝いをしている時?


それとも……マサトと一緒に、誰かの人助けをしている時?



「私は……友だちやおばあちゃんと一緒にいる時が、1番楽しいです」


絞り出した答えを聞いていた宇佐美先生は、否定することなく優しげに微笑んでくれた。


「そうなの、素敵なことね。じゃぁ、もうひとつ質問するわね。天音さんの長所と短所って、なんだと思う?」