少し腰を曲げた私と不機嫌な青龍院くんを交互に瞳に写した彼は、どうやらなんとなく事情を察したようである。

「なんなん、トオル。ノゾミちゃんだけ仲間はずれとかはいかんよ、仲間はずれは」


抗議の声と、はぁと深い溜息を吐く音が、教室に消える。


「あのなぁ。そんなことばかり言ってると、そのうちクラス全員の勉強を見てやらないといけなくなる気がするのは、俺だけか?」

「ちょっとくらいえぇやんかー。ケチぃ〜」


やがてやり取りすることすら面倒になった青龍院くんが、清潔感溢れる黒髪ショートヘアを揺らして目を細めた。


「しょうがない。コイツ(白虎町)がうるさいから、今日はとりあえず天音さんにも勉強を教えてあげるよ。ただし、出来が悪いやつにいつまでもちんたら教えるヒマはないから、今日の進展次第では見限ることもあり得るからヨロシク」

喋ったあとにはまるで砂糖不使用のミントタブレットのような、ツンとした爽やかさが広がっていく。


学校一の天才は、突き放すような物言いに冷たさを感じながらもどこか人情を感じさせる、不思議な人だった。



春の日差しのような輝きをパァッと顔に灯し、私はぺこりと頭を下げる。


「あ、ありがとうございます!」