泳ぐ魚を狙う猫みたいに水槽を眺めていた白虎町くんが突然、ポンッと手のひらを叩く。

「あ! せやせや、マサトぉ〜。暇やし久々にアレやってや、得意のアレ!」


彼がそう言った瞬間、幾人かの空気が張り詰めたのが分かった。


「得意のアレって、なに?」

興味津々に身を乗り出せば、マサトはニヤリと悪い笑みを浮かべる。


「ああ、ズボンの上からケツ毛抜くってやつな」

「……はい?」


思考がついていかず、もう一度尋ね返す。


マサトの代わりに、もうすでにお腹を抱えてゲラゲラ笑っている白虎町くんが説明する。


「マサトはなぁ、ズボン履いた上からでもケツの毛抜けるんやでー! 凄いやろ!? 抜かれた方は、『どんだけ正確な指先してんねん!』って突っ込みたくなるからなー」


辺りを見回せば、いつの間にやら玄武くんと青龍院くんはコチラを警戒するようにして、壁に背を向けて立っていた。


「いや、マジでやめてくれよ? あれ、洒落にならないくらいに痛いから」
「マサト、お前……俺にやったら次のテスト範囲、教えてやらんぞ……」


っというわけで、魔王様が標的に選んだのは……


「おい、ちょっと後ろ向いてみ?」

「えっ、えっ? な、なんですか? 後ろをむけば良いんですか?」


呑気に拭き掃除をしていた、オタクくんである。