力と力がぶつかり合い、均衡した最後の勝敗を決めるのは、日々の努力でも優れた技術でもない。


「負け……るかよっ!」


汗を撒き散らし、心に強い願いを秘めた者が、勝利するのだ。

「これで、終わりだ!」


玄武くんの指から放たれたボールが、3回目のシュートを決める。

湯沢コーチは言葉を失ったまま、ネットを揺らすボールを見つめていた。

審判が勝負が終わったことを知らせる笛を鳴らす。


「終了ー! 3対2で玄武くんの勝利!」


フェンス越しに見守っていたギャラリーの歓声が、ワッと大きな波になって夕焼け空に響く。


「おめでとさーん、玄武!」
「さっすが桜島高校のバスケ部だな!」
「良い勝負だったよ!」

駆け寄ってくる白虎町くんや社会人チームの人たちの拍手を受け取り、まんざらでもなさそうな玄武くん。

しかし、すぐにその表情はキリリと引き締められ、コートに伏す者に向けられる。


「湯沢コーチ……約束通り、小雪に謝ってやってください」

「……くそっ!」

なんと湯沢コーチは謝るどころか、早々にこの場から逃げようとし始めたのだ。


荷物をまとめ、鼻息荒く入り口に走り去ろうとする。


(どこまで性根が腐ってるの!)


「ちょ、ちょっと! ちゃんと小雪さんに謝りなさいよ」

筋を通さずに隣を過ぎようとした彼の手を掴めば、バッと乱暴に振り放された。