「分かった。つまりアキラは、バスケ勝負でその腐ったコーチをぶん殴って、反省させたいってことだろ?」

「まぁ、そういうことだな」


すると先ほどから何やら後ろの大学生たちと喋っていた白虎町くんが、話に割って入ってくる。


「みんな聞いてや〜。朗報、朗報! この大学生さんらが、その湯沢コーチって人と知り合いらしいで〜」

「それ、本当か?」

驚く玄武くんを他所に、怖くて悪い笑みを浮かべたマサトが、チカチカと点滅を繰り返す街灯の下で、ひとりの大学生の胸ぐらを掴む。

「おたくら、ガチで知り合いなの?」

「ひっ、ひぃ! ほ、本当だよ! 同じ講義受けてるってだけで、友だちではないけど……」

「じゃぁ日曜日の17時に、そいつに此処に来いって言っといてくんねぇ? 言わなかったらどうなるか、分かってるよなぁ? 俺、あんたらの顔もう覚えたから、街中であったら覚悟しとけよ?」


震え上がる大学生から手を離し、それだけ命令すると、今度は「さっさと失せろ」と興味無さげに突き放した。

バタバタッと駆け出して逃げていく情けない大学生たちの背中を、静かに見送る。


「日曜日の、17時か……」

バスケ部の元エースの呟きを拾った私は、彼にこう声を掛けた。


「ねぇ、玄武くん。明日、その勝負に小雪さんを連れて来てあげてもいいかな」