「うおぉぉ! アイツすげぇ!」
「見たかよ、あの動きっ」

コートの周りでは野次馬たちが彼の実力に感化され、雄叫びを上げている。


「す、凄い…………」

口を開けてぼんやりとしていた私だったが、隣ではマサトがニヤリと口角を上げていた。


「あー、やっぱりな。アイツ、こんなとこにいやがったのか」

「えっ? なに? なんか言った?」


首を傾げて尋ねるも、マサトは言葉を濁す。

「いーや、別に。ポチはそのまま敵のマーク引きつけといてくれや。なんなら、庭を走り回る犬みたいにコート内を駆け回ってくれても良いんだぜ?」


ムッキー!っと猿みたいな鳴き声を上げて、小憎たらしい奴の意地悪を聞き入れてやることにした。


「良いわよ、走り回ってやるわよ! だから、私にボール渡さないでよね? 多分、相手に盗られるだけだからっ! 分かった?!」


「お前なぁ……。ボール盗られるだけって、自信満々に言うなよ……」