「頑張りやー、マサッ、……丸メガネ〜」

スマホ片手に応援する気があるのか無いのか、白虎町くんのゆる〜〜い声援が飛び交う。


「おい、パーカーがそっちに行ったぞ!」


キャップ帽男が慌てて指示を飛ばせば、ジャージ男とタオル男がマサトからパスを受け取ったパーカーくんの前に、立ち塞がった。


ふたりのディフェンスに囲まれながらも白い歯を見せてドリブルを続け、次に何かを仕掛けようと思案している彼の背からほとばしる並々ならぬプレッシャーに、思わず目が奪われる。


彼は、一体…………。


「コイツ、なめやがって……っ!」


前後左右に華麗にドリブルを繰り返すもその場から動こうとしないことに痺れを切らせたひとりが、左足のカカトを浮かせた、その瞬間。


リズムよく刻まれていたドリブル音が急に、消えた。


「なにっ?!」

くるりと身体を回転させ、しなやかに相手を翻弄し、ふたりの壁を突破する。

そのまま軽く後方にジャンプしながら後ろから迫り来る敵を嘲笑うかのようにボールを手離せば、放物線を描いたそれは鮮やかにゴールネットを揺らした。