「はぁ? お前らと俺たちが? ハンッ、勝負がしてぇなら、もうひとりメンツ揃えるこったな」

女装姿のハルカくんと、マスクをして風邪を装っている白虎町くんを鼻で笑いながら、戦うことすら拒否してくる大学生達。



……しかし、そんな彼らの前に躍り出る、ひとりの人物がいた。


「その勝負、俺も参加させてくれ」


それは隣のコートで社会人チームとプレイしていた、パーカーを着た男性だった。


白いフードを深く被っているため顔はよく見えないが、どうやら私たちの味方になってくれるらしい。

彼が先ほどまで混じっていたチームの社会人達が、フェンス越しに「勝負くらいしてやれよー」とヤジを飛ばす。


素性の知れぬ謎の人物は、私とマサト、そして自分を指差し、ふっと口角を上げた。


「これでメンツ、揃っただろ?」


「そこまで言うなら、勝負してやろうじゃねーの。3分後に始めるから、準備しとけや」



大学生たちはそう台詞を吐き捨て、苛立ちながらシュート練習を始める。


私は謎の人物に聞こえないようにマサトの袖を引っ張り、ひそひそと耳打ちをする。


「ねぇ、なんでこんなことになってるの? 玄武くんに全然関係の無いトラブルに巻き込まれてるじゃない」


掴まれていた袖を振り払い、マサトが片手でボールを投げつけるようにゴールに向かって投球すれば、ガコンッとゴールのネットを揺らした。


「まぁまぁ、良いじゃねぇ〜のぉ? 面白くなってきたしぃ。パーカー野郎のお手並み拝見と行こうぜー」

「ちょっと、その蚊の鳴くような変な声、やめてよ。笑っちゃうから」