「分かった分かった、ポチの分まで俺が言い返してやるよ」

カチャリと黒縁メガネを中指で上げて気合いを入れる動作を見て、(おお、頼もしいとこあるじゃん)っと見直したのも束の間。


なんと彼は、大学生たちを煽るような震えるボイスで抗議し始めたのだ。


「あ、あの~、こ、此処は僕たちがお金を出して借りてるんでぇー、30分だけ待ってもらえませんかぁ?」


お前は今から合唱でもするのかと言いたくなるようなソプラノ級の甲高い裏声に、耳触りだと感じた大学生たちは、眉をしかめる。


「っるせえよ、オタク野郎! 癪に触る声出しやがって!」
「年上を舐めてんのか?」
「あんまり調子乗ってると、痛い目あうぞ?」


普段の彼なら此処でケンカが始まり、試合終了となるのだが。


「じゃぁー、俺らとミニゲームやってもらっても良いっすかぁ?」

俺ら、と聞いて嫌な予感が脳裏をよぎり、私の額には冷や汗が吹き出てきた。