初めて好きになった相手は、幼稚園の新田先生だった。

優しくて、面白くて、いつも笑顔だった先生。


「紗雪ね、新田先生の事、だ~い好き!」

「有難う。先生も、紗雪ちゃんの事、大好きだよ。」

今では何気ない、どこの幼稚園でもあるような日常会話を、私の両親は、お迎えの時に聞いた。


その日の帰りの事。

車の中でお母様は、私に静かにこう言った。

「紗雪ちゃん。」

「なあに?お母様。」

足をバタバタさせながら、新田先生と遊んでいた時間を、思い出していた。

「紗雪ちゃんが大人になったらね。お父様とお母様が、王子様を連れて来てあげるから。新田先生の事は、忘れましょうね。」


幼稚園の私には、衝撃の一言だった。