「映画部の先輩が使ってたのかもな」


孝利がそう言い、懐中電灯を一本手に持つ。


そちらもちゃんと電気が付くようだ。


「せっかくだから使おうか。夜に森をさまよい歩くシーンがあっただろ」


俊和が孝利へ向けてそう聞いた。


「そうだな。一応浅野先生に聞いて、それから――」


孝利がそう言った時だった。


ガサガサッと大きな物音が聞こえてきて、孝利は途中で口を閉じていた。


あたしが何度も聞いた音にそっくりだ。


草木をかき分けるような音。


「なんだ今の音」


亮輔がそう呟いて小窓から外を覗く。


「まさか野生動物?」


麻由子が怯えた声を出した。