☆☆☆

「気にすることないよ」


少し離れて池を眺めていたあたしに、そう声をかけたのは麻由子だった。


「麻由子……」


「映画部の合宿なんだから、恋愛にかまけてるヤツなんてほっときなよ」


そう言われて少しだけほほ笑んだ。


麻由子も祐里の仲間だと思っていたけれど、あたしを気にかけてくれていたようだ。


「ありがとう」


「いいのいいの。それよりこっち来てよ。さっき何か泳いでたよ」


「池の魚かな?」


麻由子に促されて池へと近づく。


緑色に濁った水面には自分の顔すら映りこまない。


こんな中にも生き物はいるのだろう。


そう思っていた次の瞬間だった。