森への入り口付近に化け物がいるのが見えた。


全身から血の気がひいていく。


逃げなきゃ。


そう思うのに、足が固まってしまったように動かなかった。


「長田! こっちへ来い!」


浅野先生の声がする。


わかってる。


あたしだって逃げたいんだ。


だけど、恐怖心から体はガタガタと震え始めていた。


化け物は真っ直ぐあたしへ向けて近づいてくる。


スマホしか持っていないあたしに、攻撃する術はない。


「どけろ!!」


そんな声がして振り向くと、浅野先生の静止を振り払い、こちらへ走って来る俊和の姿が見えた。