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スマホを片手にグラウンドに出てからも、引っ張られていた方の腕は痛みを感じたままだった。


女の嫉妬の恐ろしさを身をもって体感した気分だ。


あたしはグラウンドの中ほどまで歩き、立ち止まった。


振り返ると祐里と麻由子の2人が入口に仁王立ちをしてこちらを見ている。


途中で逃げ出さないように見張っているようだ。


あたしは息を吐きだして周囲を見回した。


物音もしないし、化け物の気配もない。


それでも警戒心を緩めずにその場に立ち続ける。


こうしてここにいるだけで、本当に化け物は現れるんだろうか?


人の臭いを嗅ぎつけたりするんだろうか?


疑問が出てきた時、合宿所の窓が開く音が聞こえてきてあたしは視線をむけた。


あの窓の位置は休憩室だろう。


「何してるんだ!?」


窓の向こうからそう声をかけてきたのは浅野先生だ。