それなら今映画界で活躍している先輩の過去作品を見たかった。


「ごめん、今日はこれが見たんだ」


孝利が手にしていたのは《茜色の恋》という作品だった。


「それ知ってる!」


あたしは思わず大きな声でそう言っていた。


去年大ヒットした恋愛映画に携わっている、先輩の作品だ。


「なになに? 恋愛もの?」


「いいね! あたしそういうの好き」


恋愛ものということで女子2人の食いつきはいい。


亮輔には申し訳ないけれど、ちゃんと勉強がしたいのならこちらの作品を見るべきだった。


「亮輔、こっちでもいいかな?」


あたしがおずおずとそう聞くと、亮輔は肩をすくめて無題のDVDを棚に戻したのだった。