「拓人、ずるい……」
「お嬢様、よく聞こえません。何かおっしゃりたいことがございましたら、はっきり申し上げてください」
そんなの、言えるわけがない。
ドキドキして、頭がうまく回らなくなる。
小さく首を横に振れば、拓人は小さく笑った。
「話があると言ったのは、お嬢様のほうです」
「うう……」
確かにそうだけれど、この状態だと何も言えない。
「拓人、離れて…」
「どうしてですか?」
「もう座ったらダメ」
拓人が立ち上がれば、自然と距離があくから。
「でしたらなおさら早く、キスのお勉強を済ませましょうか」
「……っ、やだ」
また拓人は私が照れるようなことを言ってくる。
それが恥ずかしいからこうして訴えようとしているのに。



