街行く人々のなか、女子高生の二人組が歩いてきた。
歩道の真ん中を広がるように歩いてくる彼女達は、
持っていた携帯電話の画面を見ながら、
「何これ。」、「すごい。」や「天才じゃん!」と騒いでいる。
彼女達が夢中になって見ているのは、
最近世間を騒がしているという、"無名の絵師"の作品。
その絵は、「荒々しく書き殴ったように見えるなかで、
どこか深い悲しみを感じさせる。」と言われる、
今最も注目されているものだ。
そして世間の人々が興味をそそられる要因としては、
絵師のプロフィールが一切公開されていないことだ。
その為、性別から年齢、人格とあらゆる憶測が世間を騒がしている。

そして逃げるように背を向けた僕こそ、その"無名の絵師"。
17歳のただの男子高校生だった。