長くてかったるい校長先生の式辞も、今の私には短く感じた。


来年は私が卒業生。
この式辞を直接聞く事になる。



『在校生』という席に座りながらも私は『卒業生』の席へ視線を追った。
……一番後ろでちょっと眠そうに、でも真剣に聞いてる人を見つめて小さく笑った。



「…梓(あずさ)、顔笑ってる」



横から小声で友達に話し掛けられて慌てて俯いた。
……視線の彼は、私の先輩。








それから、私の初恋。




友達は私を見て呆れたようにため息をつき、先生が聞いていないか確かめて再び小声で話しだした。



「梓ぁ、今日であの人見るの最後かもしれないのに、良いの?」



「…………何が?」



「告白しなくても」




友達の言葉に一気に顔が熱くなったような気がした。
火照った顔を冷まそうと私は先輩から視線を逸らした。