一か月半後。
海賊との出会いもあった港への視察から帰ってきた明日香は、着々と準備を進めていた。もちろん、いつ敵に攻められてもいいように、という準備だ。
できるだけの兵糧を城に備蓄するように各地の貴族に命じ、防具や武具の軽量化を推奨した。
そしてついに、敵が動いたのである。
「国王陛下、カルボキシル軍が侵攻してきたとの情報が入りました! プロリン城が奪われたようです」
伝令兵が、息を切らせて城へ駆けこんだ。
カルボキシルは、システインの東に位置する強国である。つい最近も周囲二国を屈服させ、手中に収めたというのを、明日香はペーターから教わっていた。
「ついにきたわね」
システインは気候が良く川にも恵まれ平地が多いため、穀物がよく育つ。港からの税もあり、この大陸では地味ながらも豊かな国だ。だから狙われやすい。
「国王陛下、どういたしましょう」
「相手は自慢の騎馬隊で、プロリン城をやすやすと落としたそうです」
明日香はほくそ笑んだ。最強の騎馬隊と聞けば、あの武将しか浮かばない。
「敵は必ずこの城を狙ってくる。今すぐに馬防柵付近に向かう」
「御意」



