明日香はにやりと微笑んだ。

(まるで村上水軍ね。通行料は取るけど、強盗はしない、と)

 木津川口の戦いを思い出し、勝手にワクワクする明日香だった。木津川口の戦いとは、織田信長軍と対立した石山本願寺に兵糧を届けようとした毛利家とその家臣、彼らに力を貸した村上水軍の戦いである。

「楽しそうだな」

 ジェイルにわしゃわしゃと頭をなでられ、明日香は旅の目的を思い出した。

「ねえ、その辺を散策してみよう」

「ああ、そうだな。おいお前たち、五人ほど、遠巻きについてこい」

 あまり大人数で移動すると、どうしても周囲の目を引いてしまう。ジェイルは相変わらず、ひっそりと生きることを好んでいるらしい。

 まるでデートのように、明日香の右手はジェイルの大きな左手に繋がれた。歩調を合わせて歩いていると、明日香はだんだんと楽しくなってきた。

 食べ物や織物、食器などが道端に並べられて売られている。その中で、明日香はあるものに目を止めた。

「おお、貴族様。どうか見てください。この国にはまだ普及していない新型武器ですよ」

 小麦色に焼けた肌の男は、違う大陸からやってきたと言う。たしかに服装も、この国の人たちとは少し違っていた。体格も一回り大きい。