「俺は一日も早く、お前を花嫁にしたかったんだ」

 ジェイルは立ち上がり、座っている明日香の後ろから腕を伸ばす。優しく抱かれ、明日香の心拍数が上がる。

「もう少し落ち着いてからの方が……」

 前国王が亡くなったばかりだし、軍師を名乗る異世界の女性がいきなり花嫁になったのではうさんくさすぎる。

「わかっている。けど、これくらいはいいだろ」

 後ろからあごを上げられ、背を屈めたジェイルに明日香の唇は奪われた。

 温かく柔らかい物が、一瞬触れてすぐに離れていく。明日香はみるみるうちに頬を真っ赤に染めた。

(私、これだけでしばらく頑張れそう……!)

 この人の役に立つためなら、戦乱の異世界でも強く生きてみせよう。そう強く誓う明日香なのだった。