ジェイルはうんざりしたような顔をしているが、明日香はだんだんとワクワクしてきた。

(神の予言だって。私、そういうの大好きなんだけど)

 上杉謙信の母親も、毘沙門天が「お前の腹を借りるぞ」と夢に出てきたという。伝承に過ぎないが、面白い話だ。

「この通り……わしはもう最期が近い……お前を後継者に任命する……」

 苦しそうに顎で息をしながら、国王がジェイルを見上げた。しかし彼は、首を縦には振らない。

「兄弟たちが黙っていないでしょう」

 国王にかけられた言葉に、アーマンドが答える。

「ふたりの兄上は、つい先日の戦でお亡くなりになりました。残されたお子はまだ幼い」

「なんだと」

「殿下が思っておられるより、この国は危機に瀕しております。どうか、私たちの国王になってください」

 山奥にこもっているからわからなかったが、どうやらこの国は本当に戦乱に巻き込まれているらしい。明日香は口を開く。

「ジェイル、こういうとき、国にはカリスマ性を持ったリーダーが必要なのよ」

「かりすま?」

「山奥に大事に隠されていた王子が帰ってきた。これは美味しい。とても美味しいシチュエーション」