「待って!」

 勇気を振り絞り、一歩踏み出す。ジェイルも歩みを止めた。

「あなたの正体がなんであれ、ここで待ちぼうけなんてできない。私も連れていって」

 農民だろうと王子だろうと、ジェイルはジェイルだ。明日香は開き直った。

(それに、ここにひとりで残されても、野たれ死に決定じゃない。また敵がいつ来るかもわからないし)

 ジェイルが明日香を危険から遠ざけようとしてくれているのはわかるが、それは彼女にとってはどうでもいい気づかいだ。結局ジェイルがいなくては、明日香は生きていけない。

「どこにだって一緒に行く! だって私、あなたの妻だから!」

 明日香がダッシュしてくるので、男たちは思わず包囲を解いてしまった。駆け寄った彼女を、ジェイルはしっかりと抱きとめた。

「……すまない」

「謝らないで」

「一緒に行こう、アスカ。どこまでも」

 明日香もぎゅうと、ジェイルにしがみついた。アーマンドは苦い顔をしていたけど、結局二人は同じ馬に乗り、山を下ることになったのだった。