ここには反対する両親もいない。明日香は思い切り首を縦に振った。

「私でよければ。よろしくお願いします」

 見上げると、ジェイルはホッとしたように微笑んだ。

「ああ、よろしく」

 大きな手が、明日香の肩まで伸びた髪をすくってよける。彼女がまぶたを閉じると、そっとジェイルがふたりの隙間を埋める。

 唇が触れる。たくましい腕に強く抱きしめられて、明日香は天に昇るかのような心地になった。

(毛利元就と妙玖のように、仲睦まじい夫婦になれますように)

 側室を持つのが当たり前の時代に、毛利元就は正室の妙玖ひとりを愛した。彼女が亡くなったあとも「今ここに妙玖がいればなあ。会いたいなあ」という手紙をたびたび送って、息子たちを辟易させていたという。

 ジェイルにとっての妙玖になれるよう、もっと異世界に馴染まなくてはと思う明日香だった。