病院のベッドの上で、明日香はふうと息を吐いた。

 救急搬送された彼女は、レントゲンや脳波の検査などたらいまわしにされ、結局異常なしということで家に帰されることになった。

 夕方迎えにきた両親は、明日香より取り乱していた。

「あんた、何やってたの。どうして救急車なんか」

「いや、それが全然思い出せないんだよね……」

 朝古墳に出かけた。夕方ずぶ濡れで倒れているところを発見された。わかっているのはそれだけだ。日付は変わっていない。

「強盗に頭でも殴られたのかな」

 あのあとおばあさんが周辺を掃除したが、明日香の荷物は見つからなかったらしい。

「頭に傷はないでしょ」

「あ、そうか」

「まるで神隠しにあっていたみたいね」

 腑に落ちない表情の母親について、父親の車に乗り込む。途中で回転ずしを食べ、家に帰った。

「なんか、すごく久しぶりに日本食を食べた気がするんだよね」

 寿司や味噌汁、サイドメニューのうどん、茶わん蒸し。食べ慣れているはずなのに、今日はなぜか懐かしく感じた。涙が出るほど美味しかった。

「何言ってるの。いつも日本食でしょう。早くお風呂に入って寝なさい。明日は仕事なんだから」

 母の厳しい言葉に、明日香のテンションは地に落ちる。