足元の悪い山道だ。暗闇で馬を走らせれば、何が起きるかわからない。ジェイルはこれ以上進むことを泣く泣く断念した。
(早く見つかってくれ。早く、誰かいい知らせを……)
設営されたテントの中で、ジェイルは一心に祈った。兵士が持ってきたパンと干し肉にも手を付けなかった。食欲が湧くはずもない。
眠れるはずもないが、少しでも体を休めておかなくてはならない。ジェイルはごろんと横になった。
まぶたを閉じる。暗くなった視界に、水の中でもがく明日香の姿が自動再生される。想像したくないのに、最悪の事態が勝手にイメージとして浮かんできてしまう。
心臓が大きな音を立て、毛細血管が縮み上がる。ジェイルはまぶたを開け、大きく息を吐いた。
(どうして離れたりしたのだろう。敵に絶好の機会を与えてしまった)
激しい後悔がジェイルの胸を焦がす。
「あぁ!」
ジェイルは飛び起きた。
(居ても立っても居られない。少しでも早く帰り、明日香を探したい)
兵士を叩き起こし、ランプを持って徒歩で山道を下る。馬より遅いが、危険は少ないはずだ。決心したジェイルは、立ち上がった。そのとき。



