トリップしたら国王の軍師に任命されました。


 ジェイルの元に明日香失踪の知らせが届いたのは、彼女が川に落ちた二日後のこと。

「なんだと……!?」

 明日香の背中を押した兵士は、周りの兵士にすぐ捕えられた。まさかの事態に、ジェイルは言葉を失う。

 彼はアミノ国との会談の最中だった。しかし、それどころではない。

「すぐにシステインにお戻りください。 私たちも用意を整えたらすぐに援軍を送ります」

 グアニジム城の水攻めで明日香に助けられたアミノ国は、システインに力を貸すことを約束した。

「かたじけない」

 ジェイルは親衛隊を引き連れ、馬を疾走させる。

(誰の陰謀だ。アスカ、どうか無事でいてくれ)

 若い兵士は、おそらく誰かに支配されて明日香を突き落としたのだろう。ジェイルはぎりりと奥歯を噛みしめる。

(やはり、下手人はアーマンドではなかった)

 血眼になって馬を走らせていたジェイルに、バックスが後ろから追いかけてきた。

「陛下、日が暮れます。これ以上は危険かと」

「休んでいられるか!」

「アスカさまの一大事、心中お察しいたします。しかし陛下にまで何かあったらシステインは崩壊してしまいます」

 その言葉で、ジェイルは馬の速度を緩めた。見上げると、赤く染まった空にラベンダー色の幕がかかりはじめている。

(くそっ)